環境3Rは競争力を高める

 

少し前の話だけど、山口東京理科大学の小林教授にお話を伺ったときのことだ。

 

小林先生は「液晶の生みの親」とも言える業界ではカリスマ的存在で、日本液晶学会の会長なども努め、また数多くの賞を受賞されている。

先生とは最近、経済産業局のあるプロジェクトで一緒に仕事をさせて頂いている。

 

実際にお会いすると、とっても気さくな方だ。

先生は特に環境問題について取り組まれているのだが、その時に伺った「3R」(Recycle, Reuse, Reduce)の話が強く印象に残っているので紹介したい。

 

環境問題というと、最近は京都議定書が話題になることが増えた。

しかしこれまで環境というとイメージ先行で、お金は掛かるけど収益には繋がらないという印象が強い。しかし先生は今後の技術開発の方向性として、環境技術、特に3Rへの取り組みが重要だ、という主張を持っておられる。

 

確かにそうだなぁ…と思いつつも私は尋ねた。

「とは言え先生、メーカーはどこも収益力が厳しいので、収益に繋がらないようなことはやらないんんじゃないですかね?」

「田中さん、それは違うよ。3Rを突き詰めれば、結局はコスト削減になるんです。」

 

….ええ!?

 

環境問題を考えれば、できるだけ資源やエネルギーを使わないで済まそう、という工夫が生まれる。

もっと少ない資源で済むように小さくしよう、もっと効率よく、短い時間で作れるようにしよう、

そういうことになる。例えば従来の1/3のプロセスで済むようになれば、ラインが短くなる分だけ照明も要らなくなるし、人件費も下がる。小さくなれば原料が少なくなり、コストも安く済む。

特に原材料の価格はどんどん上がっているから、再利用ができればなおさらだ。

 

….うーん、確かに。

 

特に最近は環境問題は様々な変化が出てきている。

環境税も本格的な議論が始まりそうで、導入は時間の問題だろう。

また家電リサイクル法の流れなどを考えても、これからメーカーは、作るだけではなく回収まで商品のライフサイクル全体を見てトータルでのコスト管理を考えざるを得なくなる。

環境基準を守れなければ「税金」という形で、リアルに費用が掛かってくる時代になるのだ。

 

環境が企業にとっての売上増や競争力、そしてユーザーの具体的なメリットになっている好例は自動車業界にある。

トヨタは「ハイブリッド」によっていち早く環境対策を打ち出し、今や世界トップを狙う勢いだ。

ハイブリッドは燃費を良くする=少ないガソリンで済む=維持費が安くなる/環境にも優しい、ということで、環境への取り組みがユーザーメリットに直結する、という好循環が生まれている。

ハイブリッドという環境技術が、直接的な売上増はもちろん、企業ブランドの向上にもどれだけ貢献したか計り知れない。

 

一方、最大の市場である米国では、ガソリン価格の高騰などによって国内メーカーは急速に競争力を失い、今やGMやフォードは大赤字、最大手の部品メーカーであるデルファイは破産に至るなどボロボロである。

 

米国メーカーにすれば、「環境問題がこんな形で急激にやってきて、それがこんな致命的なダメージになるとは、夢にも思わなかった。」というのが正直な気持ちだろう。

 

しかしガソリン価格の高騰は来るべくして来たものであり、今までそのリスクが読み切れなかったか?、と言われればそれまで。

会社の規模がデカイだけに、そんなに急には舵は切れない。

 

自動車業界はグローバル規模での競争なので、いち早くこの環境問題の影響が出ただけだ。

これは対岸の火事ではなく、次はアナタの業界に来るはずだ。