9月17日に金融危機の始まりについて書いてから2週間。
その間にNYダウはあっという間に3000ドル以上も下がってしまった。
今も今週最後の米国市場の動きをビクビクしながら見ているが、一時は500ドル以上も下げた。
世界経済は"未体験ゾーン"に突入した。
投資をやっていると希望的なシナリオにすがりたくなる。
だがこれは一時的な現象や調整局面といった生易しいものではない。
紛れもなく「世界恐慌」が始まっているのである。
この"新しい現実"を認識するこそが、これからの方針を決める第一歩である。
先日もブログで書いたが、「恐慌」はまだ始まったばかりである。
日本のバブル期がそうだったように、証券・住専の次はノンバンク(カード系)へと波及してくる。
特に米国はカード社会で、GDPに占める個人消費が7割と突出している。
仮にノンバンクが破綻すれば、経済に与える影響は日本より遥かに大きい。
現在、不動産で行き詰まった人の多くが金利の高いカードローンに逃げている。
だが不動産の値上がりが期待できない以上、もうあぶく銭は得られないし、借金返済の見通しも立たない。
株や不動産の投げ売り、カード破産が急増するのは避けられないだろう。
消費低迷の影響はサブプライムとは時間差でやってくる。
本当の意味での「不況」はこれからなのである。
直近で起こる可能性が高いことで、特に影響が心配されるのは次のことである。
・GM、フォードの破綻(チャプター11の申請)
→3ヶ月前まで30ドルを超えていた両社の株は、今やGMが4ドル、フォードに至ってはわずか2ドルである。
リーマンが株価が1ドルまで落ちて破綻したことを思い出して欲しい。一般的に言えば株主に見放された"クズ株"である。
いつ飛んでも不思議ではない。…..というか飛ばない方がむしろ不思議だ。
→ただしGM/フォードは儲かる自動車が作れないというのが問題で、買収の魅力が乏しい。
しかも規模が巨大であるため、引き受け手は現れない可能性が高い。
裾野も含めると余りにも巨大であり、破産させた場合には数十万人規模の失業者が出ることになる。
結局、"Too Big to Fail"で米国政府は公的資金を注入して潰さないだろう。
しかも米国にとっては貴重な輸出産業であり、米国にとって自動車は「誇り」でもある。
・ノンバンク系金融機関の破綻
→世界最大のノンバンクはGEである。またシティバンクもカード事業の割合が大きい。
前述のように、不況による消費低迷の影響やカード破産が本格化するのはこれからである。
・商業不動産関連ローン(CMBS)の価値目減り
→Alt-Aやプライムより、今後の影響が懸念されるのは「商業不動産担保証券」(CMBS)だ。
各金融機関共に金額が大きく、地価下落の影響がストレートに出てくる。
しかもノンリコース(不遡及)条項のものが多いので、ローンが飛んでしまったら損失は金融機関がモロに被ることになる。
バブル崩壊で地価が2/3が半分程度に下落する可能性が高い。
あちこちで債務不履行が発生することになるだろう。
金融機関が保有するローンの資産価値は大きく目減りすることになる。
・同様に事業資金として使われるLBOローンも、延滞率の増加で資産価値が落ちる可能性が高い。
・資産運用会社の破綻
→生保、損保など資産運用が中核業務になっている会社で破綻が相次ぐだろう。
昨日公表された大和生命の例はまだ氷山の一角である可能性が高い。
生保などでは低金利の中、過去に高利回りの条件で残っている保険も少なくない。
運用利回りを上げるためにレバレッジは掛けているのが普通である。
→一週間足らずで株価が約3割も落ちても耐えられる資産運用会社の方がむしろ異常である。
→体力の弱い中堅、中小企業ほどリスクを取っている可能性が高く、評価損などで業績は一層厳しいものになるだろう。
・国家レベルの破綻
→昨日から、アイスランドの主要3銀行が全て国有化されたというニュースが流れている。
国家レベルでの破綻が懸念されている。
→特に懸念されるのは「韓国」だ。
GDPに占める輸出産業の割合は日本が約15%に対して、韓国は約7割である。
通貨変動の影響、海外市場の不況による影響がストレートに業績に響くことになる。
米国という最大・最強の顧客を失うと非常に厳しくなるだろう。
最悪のシナリオは米国自身の破綻(デフォルト)である。
米ドルは(一応まだ)基軸通貨であるため、理屈の上ではデフォルトをしないことになっている。
ただしドルを大量発行すれば「ハイパーインフレーション」になることが懸念される。
米国経済は海外投資家からの資金が無ければ回らない構造だ。
破綻する可能性は十分過ぎるほどある。
・中間決算の発表時に下方修正が相次ぐ
→10月中旬~後半にかけて行われる中間発表では、株価暴落による評価損の計上が相次ぐだろう。
さらに輸出産業については、円高による差損と米国経済の低迷で、下方修正が相次ぐだろう。
ひとつの山場になると思います。
→さらに金融機関は自己の生き残りのために、なりふり構わず「貸し剥がし」をやってくるだろう。
不況に輪をかけるようであるが、これも全く日本のバブル崩壊時と同じである。
その他にも中堅規模への波及など、取り上げればキリが無いほど大きな変化が予測される。
借金はできても稼げない(=返済の目処が無い)、という米国の問題は何も解決していない。
今はただ、これ以上出血しないように絆創膏を貼っているだけだ。
根本的な解決には産業構造の改革と、身の丈にあったレベルに支出を落とすしかない。
地価が適正水準まで落ち着きを取り戻す必要がある。
少なくとも5-6年は掛るだろう。