ソフトバンクの戦略

 
久しぶりの更新です。
 
昨年12月後半から「デジタルネットワーク産業2007-2020」の執筆で毎日徹夜が続いています。
2-3時間仮眠→原稿→仕事→原稿。…で週末は半日だけぐっすり寝る、という生活。
既に2ヶ月以上続いているので、さすがに死にそう。
前回も死にかけて、今回は学習したので……と思ったらやっぱり大変。(笑)
 
今回のレポートの出来はかなり良いと思います。
ぜひご期待ください。
 
 
ブログで書きたいことは山のようにあるのですが、毎日書きっぱなしで気力が沸かず..
謝りついでに、レポートでも書いたネタを先行をひとつ。
 
ソフトバンクの「基本料金980円」プラン。
途中で解約しようとなると、携帯電話のハード分として約7万円位請求が来てビックリ。
世間からはいろいろ批判を浴びてますが…… 戦略としてあれは正しいです。
 
そりゃ宣伝方法とか販売方法など、やり方には問題ありますよ。すごくある。
しかも「通話料ゼロ円」で公正取引委員会から「不当表示の疑い」で注意受けたばかりですから。
でも戦略の方向性が正しいかどうかは別。あれは誰がなんと言おうと「正しい」です。
…..別にソフトバンクは好きではありませんが、さすが孫社長は時代の先が見えてるなぁと思います。
 
今の携帯電話はいろいろな機能が付いて、コンピューター並の性能になっている。
当然、コストもコンピューター並みに掛かっていて、一台の原価は5-7万円しています。
では今まではなぜ2-3万円で買えたかというと……
後で入ってくる通話料を見込んで、携帯電話会社が差額を被っていたからです。
 
間違っちゃいけないのは、携帯電話は元々2-3万円だったのじゃなくて、元々が5-7万円なんです。
だから途中で解約したら7万円の請求書が来るのは当たり前。
別に途中解約された腹いせに過大な請求をしている訳じゃないんです。
 
携帯電話会社がメーカーに作らせた電話機を一括で買い上げ、それを安くユーザーに売り渡している。
これは日本独特のビジネスモデルで、「キャリア丸抱え」と言われている。
日本のユーザーはやたら高機能なものを欲しがる。でもそのままの値段じゃ高くて買ってもらえない。
だから普及させることを最優先して、メーカーが逆ザヤを被るビジネスモデルができたんですね。
 
海外の携帯電話がシンブルなのは、日本のような変な業界構造が無いから。
日本みたいに高性能の機種をつくったら値段が高くなり過ぎる。
一般のお客さんは「そんなに高いなら、そこまで高性能なのは要らない」とそっぽ向かれる。
無駄で使わない機能だろうと、そのコストは結局ユーザーがどこかで負担することになる。
タダみたいな金額にすることは、本来はユーザーが評価しない無駄な機能を増やすだけ。
 
でも今までの方がいいって…?
とんでもない。一括で払うか、通話料名目で分割して払っているかの違いだけ。
ハード代を回収するために通話料が割高になっているんですから、トータルの支払いは同じ。
それよりハードを適正価格に戻さないと、どこのメーカーもまともに携帯電話を作れなくなる方が問題。
まともな価格にしなければ、海外を含めていろいろなメーカーのいろいろな機種を使う自由もなくなる。
メーカーが携帯電話に投資しなくなるということは、テクノロジーが進歩しなくなるということでもある。
 
日本ではソフトバンクの電話機をドコモの契約で使ったりはできない。
日本ではこれが当たり前だと思われてますが、外国人に言ったら驚かれます。
欧米では基本的に、好きなメーカーの携帯電話機を選んで、好きな電話会社を選ぶことができる。
機種はそのまま電話会社だけを変える、ということももちろん出来ます。
 
SONYのパソコンを買ったら、「So-netと契約しないとネットは出来ないよ」と言われたら怒るでしょ?
でも今の日本の携帯電話は、これと同じ状態になっているんです。
MNP(番号ポータビリティ)の影響で、ようやく日本人も気づきはじめましたが…..。
 
「キャリア丸抱え」が続く限り、「好きな機種と好きな電話会社を選ぶ」という当たり前のことができない。
ハードの値段が下がって良さ気に見えるこのモデル、ユーザーにとってデメリット以外はありません。
だからまずハードを適正価格に戻し、その分上乗せしていた通話料の方を下げる必要があるのです。
 
もうひとつ、通話料とサービス利用料のバランスです。
2010年頃にはIP携帯電話も登場する予定で、いよいよ通話料では稼げなくなります。
そうなってくると「着うたフル」のようなサービス収入で稼ぐ必要がある。
 
稼げるサービスは他にもいろいろ考えられる。
でも、まず自社の携帯電話と契約してもらわない事には話は始まらない。
月々の金額は安くてもいいからまず契約してもらい、ユーザーの決済口座を確保することが大事。
だから「基本料金980円」。これは絶妙の金額設定だと思います。
 
これは「サービス収入を主体に稼ぐ」=「今でのビジネスをぶっ壊してやるぞっ」という宣戦布告です。
通信会社=通話料というのが頭に染み付いている他の会社、どこまで意識が追いつけるか注目してます。
 
(ちなみに僕の携帯はドコモです)
 
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