今週の日経ビジネスで、半導体分野で日本企業が苦戦しているという記事が出ていた。
65ナノ以下のプロセス技術や300mmウエハーでの生産など、技術面では日本は世界トップにある。
だが業界での日本の存在感、プレイヤーとしての位置はどうだろう?
PC用MPUで圧倒的なシェアを持つインテル。
携帯電話向けDSPに強いテキサスインスツルメンツ(TI)。
日本メーカーには、回路設計でこのような得意分野はない。
また量産技術でも韓国・台湾メーカーに大きく遅れを取っているのが実情だ。
日本メーカーは最先端プロセス技術にすがって、辛うじてプライドを保っているだけに過ぎない。
半導体分野ではもはや先進国では無くなっている、という話だ。
「うちはビジネスは下手だが、技術では負けない。」
この仕事をやっていて、この言葉を何度も何度も聞いた。
でもそれは結果として「ダメ」ということには変わらない。
技術に逃げ場を求めて、現実に向き合おうとしない。
こういう会社に限って、「圧倒的に優れた技術」という夢を追いかけて、さらなる技術開発に突き進む。
「なぜビジネスがうまく行っていないのか?」本質が分かっていない。
これではいくら頑張っても業績が良くなるはずが無い。
技術が重要なのは言うまでもない。
でも「技術は使ってナンボ?」なのである。
……. ビジネスなのだから。
「使う」ために考えるべき要素が2つある。
一つは用途開発(アプリケーション)、もうひとつは生産(コスト)だ。
その技術が優れているかの判断は、何の目的に使うかによって変わる。
インテルやTIの例が分かりやすい。
要は「何に使うか?」が技術と同じ位に重要ということだ。
もうひとつはコスト。
学会から絶賛されるような技術であっても、コストが高ければ結局は使えない。
使われない技術というのは役に立たないという事であり、結果としては「ダメな技術」なのだ。
これも当たり前といえば当たり前の話である。
PlayStation3用の心臓部、「CELL」はわかりやすい例かも知れない。
技術的にはスーパーコンピューターに匹敵する驚異的なものだ。
だが6000億円とも言われる開発と製造ラインにかかった費用が、ソニーを苦境に陥れている。
5万円近くに跳ね上がった価格が、PlayStationを必ずしも「良いモノ」と言い切れなくしている。
コストを意識せずに研究開発をやっているケースは余りに多い。
しかし企業である以上、開発費は製品価格に必ず跳ね返ってくる。
湯水のように研究開発費を使うことは、結果的に自分の首を絞める。
ビジネスで研究開発をやるなら、もうひとつの評価基準として「コスト」を忘れてはいけない。