21世紀型アイスクリーム

突然ですが….僕は「ハーゲンダッツ」が大好き。

同じアイスクリームなのに、何でこんなにウマイの…?とほとほと感心する。定番の飽きのこなさも去ることながら、次々に出る新作のレベルの高さには脱帽させられる。

特に「あずき」を始めて食べた時には感動すら覚えた。どちらかといえば「あずき」は嫌いだったなのに、心からおいしいなぁ…と思った。 外国のアイスクリームに忘れていた「和」の味覚を教えられたようで、殴られたようなショックを受けた。モノがわかる外人がニホンのおいしさを発見して、その感動を逆に日本人に伝えたかったんだろうな。「挑戦状」だね、こりゃ….。

ハーゲンダッツはどこのコンビニにも必ず置いてある。それも専用スペースにド~ンという場合が多い。日本中で凄い数が売れてるはず。300円という値段はアイスクリームとしては高いけど、このクオリティを考えれば決して高いとは思わない。むしろこんな幸せを味わえるなら安いもんだ。

 

「たかがアイスクリームに大げさな…」と言う無かれ。

ちょっと前までアイスというば子供のおやつ。相場といえばせいぜい50円か100円。それが今や、300円というアイスとしては安くない値段にもかかわらずハーゲンダッツはバカ売れ。大人の食べ物として完全に市民権を得た。「高級アイス」という、いわば新しい市場を確立した訳だ。

「たぶんハーゲンダッツ1個売れば、普通のアイス10個売るより利益は出る。」

ここが大事なポイントだ。

20世紀は日本は国全体がブルーカラーで、とにかく安く・早く・大量に….を美徳とする価値観が世の中の趨勢だった。必要なものが足りていないから、質はともかくまず「ある」ことが大事だった。みんなで同じような家に住み、みんなでカローラに乗って、同じ位の給料をもらって、それで満足していた。「自分はみんなと同じ」ということが何よりの安心感だった。

でも21世紀になって世の中が成熟し、他と同じでは満足できなくなった。必要なモノは「ある」ことが当たり前にれば、次によりベターなもの=質を求めるのは当然のことだ。いろんなモノの経験を経れば、良いもの/悪いものを見分ける目も肥える。それなりにモノの価値がわかるようになった。

ハーゲンダッツは、そんな世の中の変化を掴み取った「21世紀型のアイスクリーム」だ。

北海道の末端の工場でさえ、今や「韓国が…中国と相見積もりで…」という話を聞く。安いものを作る、売上を増やすことはもちろん大切だ。しかしなんせ中国だけでも日本の1/10~1/20の人件費の人達が日本の10倍もいる。日本が戦後50年かかって辿ってきた歴史が、10倍のスケールで繰り返されようとしている。その後にはロシアやインドだって控えている。少なくともこの先50年から100年は日本より人件費の安い国々との戦いは続くだろう。

今までのように早く、安く、大量に…というだけでは、世界の中でコスト競争には"絶対に"勝てない。

 

短期間なら無理できても長くは続けられない。忙しく働いても利益が出ない→給料が上がらない、といなれば将来の展望は拓けない。やがて人材は去っていくだろう。

それに国内だけを考えれば、今後の人口は減っていくのだ。いくら豊かになっても、アイスクリームはそんなにたくさん食べられない。これからは資源や環境問題だってある。いくら大量に作れても、社会がそれを許してくれないし、買う人がいなければそもそも話にならない。

日本が21世紀でめざすべきは、「ハーゲンダッツ型」のビジネスだ。

どうやったら付加価値=利益を増やせるか?、それを経済価値として世の中に認めてもらえるか? どうやってその価値をお客様に伝えるか? (=マーケティング・コミュニケーション)を真剣に考えないと、これから日本の企業は生き残っていけない。

 

「安いよー」で済めば売るのは簡単。でも付加価値は自分が仕事が世の中でどれだけ価値を認められているか? を計る指標でもある。コストダウンは大切だけど、闇雲な安売りは自分の価値を安売りすることでもある。日本の会社は、どんなに大変でも付加価値の創造を追求しなきゃ道は拓けない。

見えない価値(値打ち)を伝えるのはその10倍は大変だ。でもその苦労の見返り(利益)は大きい。値段の安さで勝負できる時代は終わったんだ….と強い自覚が必要だ。 

ハーゲンダッツは「あずき」のおいしさ以上に、日本のビジネスで大切なものを教えてくれている気がする。

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